全身性強皮症 (SSc)

全身性強皮症 (Systemic sclerosis, SSc) とは、皮膚や内臓の硬化(線維化)を特徴とする慢性の疾患です。

国内の患者数は2万人以上と推定され、男女比およそ1:10の割合で圧倒的に女性に多い疾患であり、根本的な原因は未だ不明ながら、免疫異常や血管障害などが関係していると考えられています。

全身性強皮症は肘関節を境とした皮膚硬化の範囲によって病型た大別され、指先から肘関節までの「限局皮膚硬化型」(lcSSc)と肘関節を越えた広範囲の「びまん皮膚硬化型」(dcSSc)の2つの病型があります。

前者は全体の70%が属し、比較的軽症で進行が遅いとされます。一方で、全体の30%が属する後者は比較的重症で、食道や肺を始めとした内臓病変を合併しやすく、症状に応じた治療が求められます。

【症状】

全身性強皮症の症状は様々ですが、最も多いのはレイノー症状で、冷たいものに触れると手指が白くなったり青くなったりするものです。

その他にも、皮膚硬化、指先の潰瘍や傷痕、爪上皮の出血点、色素異常、間質性肺疾患(肺線維症)、強皮症腎クリーゼ、逆流性食道炎などがあります。

すなわち端的には、皮膚や内臓が繊維質という硬質な成分に置換されていくことで正常な弾力や伸びが失われ、皮膚や粘膜が損傷し、重症化によって指先の壊死や重篤な内臓の合併症、特に肺および食道の炎症や閉塞、また腎臓内血管系の炎症と閉塞による急激な高血圧の結果、急性の腎不全(腎クリーゼ)などを生じます。

皮膚の硬化と比較して内臓疾患の程度が進んでいる場合があるため、皮膚の突っ張りやレイノー症状などの症状に心当たりがある場合、早期受診による早期発見が重要となります。

【原因】

根本的な原因は未だ不明ながら、全身性強皮症の原因は免疫系の異常による自己免疫疾患と考えられています。

本来は細菌やウイルスなどの外敵を攻撃するための抗体が適切に異物排除に働くことで免疫学的な生体防御が機能していますが、自己免疫疾患では、抗体が自身の細胞や組織を攻撃してしまいます。

これにより、皮膚や内臓に炎症が起こり、コラーゲン線維が過剰に生成されます。

コラーゲンは美容領域で聞きなじみの多い成分ですが、生理機能的には、傷口が治癒する際のかさぶたやしこり(肉芽)のような硬化をもたらすことで、皮膚や筋肉の組織に強度や弾力を保つ役割を果たします。

自己免疫疾患では組織が常時攻撃に曝されるため、炎症による組織損傷とその治癒のためのコラーゲン産生が慢性的に繰り返された結果、局所的なコラーゲン線維の蓄積が過剰になり、皮膚や粘膜、血管などの硬化を生じ、それにより、重度の場合には各所の組織や内臓に重篤な損傷や急性的な機能不全の原因となります。

【診断・検査】

全身性強皮症の診断は、主に臨床所見と血液検査によって行われます。

2010年に国際的な診断基準が策定されており、手指あるいは足趾を越える広範囲な皮膚硬化を大基準とし、手指あるいは足趾に限局する皮膚硬化、手指尖端の陥凹性瘢痕あるいは指腹の萎縮、両側性肺基底部の線維化、抗Scl-70(トポイソメラーゼI)抗体や抗セントロメア抗体などの自己抗体の陽性を小基準としています。

大基準あるいは小基準1項目以上を満たせば全身性強皮症と診断されます。

【治療法】

全身性強皮症の治療法は、現在のところ根治的なものはありませんが、ある程度の効果を期待できるものが開発されています。

代表的な治療法としては、ステロイド少量内服やリツキシマブ(皮膚硬化に対して)、シクロホスファミドやマルチキナーゼ阻害薬(間質性肺疾患に対して)、プロトンポンプ阻害剤(逆流性食道炎に対して)、プロスタサイクリンやエンドセリン受容体拮抗剤(血管障害や肺高血圧に対して)、ACE阻害剤(強皮症腎クリーゼに対して)などがあります。

また、重度度分類に基づいて最も適切な治療の選択肢を示した診療ガイドラインも策定されています。

【予後】

全身性強皮症の予後は、患者さんの年齢や病気の進行度、合併症の有無などによって異なります。

一般的には、若い人や女性、皮膚の変化が少ない人、内臓障害がない人の方が予後が良いと言われています。

全身性強皮症の治療は免疫抑制剤やステロイドなどの薬物療法が行われますが、根治的な治療法は現在研究中のため、病気の進行や合併症を予防・管理することが目的となります。

その際、症状の進行や内臓の健康状態によって合併症を生じるため、症状に合わせた治療戦略が求められます。

共通する点としては、患部の血流を守ることが重要となるため、患部の怪我を防ぐことはもちろん、患部を冷やさずに極力暖めることに努めながら、雑菌による感染症を防ぐために清潔に保つことが重要な過ごし方となります。